ジャニー喜多川氏による性加害問題を受け、10月2日午後2時からジャニーズ事務所が会見を開き、事実上の解体を発表しました。会見ではその他にも新会社の設立や社名の公募などが発表されました。

■ジャニーズ事務所は補償のみを行い廃業へ　タレントマネジメントは新会社へ
この問題を取材しているジャーナリストの松谷創一郎さんに詳しく聞きました。まず会見を聞いてどのような感想をお持ちでしょうか？

【ジャーナリスト 松谷創一郎さん】
「事前に報道されていた通りだったなと感じました。ただ全体的にふわっとしていました。詳細はこれから決まってくるだろうし、そのたびに発表すればいいかなと思うんですが、やっぱりちょっと引っかかるところもありました」

2日の会見内容をまとめます。
ジャニーズ事務所の名称は、「スマイルアップ（SMILE-UP.）」に変更になります。これは、社会貢献・支援活動のプロジェクトとして、ジャニーズグループが行っていた活動の名称です。スマイルアップは、補償業務のみを行う会社となり、11月から補償を始め、補償後は廃業するということです。そして、タレントのマネジメントは、新会社が行います。新会社はエージェント会社として個別に契約するということです。

【ジャーナリスト 松谷創一郎さん】
「新会社を立ち上げること自体は、最初から想定されていたことで、そこに従来のジャニーズ事務所の資本が入らない形を取るのも分かるんですが、果たして本当に行われるのかどうかが問題です。例えば、関連会社がいっぱいあり、本当に切り離されるのかどうか。スキームも今から練ると言っていますが。

一番引っかかるのが、東山さんが両方の会社の社長になることです。資本は切り離されていますけど、昔の会社と新会社の社長を同じ人が兼ねることになると、ちゃんと切り分けられているのかなという疑問はやっぱり生じます」

藤島ジュリー前社長は2日の会見に出席しませんでした。新会社に藤島ジュリー氏の影響力はないのでしょうか？

【ジャーナリスト 松谷創一郎さん】
「ジュリーさんと東山さんは幼なじみぐらいの関係です。新会社の社長が第三者じゃないということを考えると、結局ジュリーさんは解体して引退したいと考えてるのかもしれないけれども 、院政の雰囲気もありますよね」

■“補償”の原資は気になるポイント
補償について、人権問題に詳しい大阪経済法科大学の菅原絵美教授によると、「どうやって補償を行ったのか、情報開示をして透明性を確保することが必要」であるということです。

番組コメンテーターの安部敏樹さんは、ジュリー氏の責任の認識やファンクラブ事業について気になる点があると述べました。

【安部敏樹さん】
「私はジュリーさんのコメントに気になるところがありました。『親族だから、おじのジャニーさんと母親のメリーさんの責任を』という話がありました。親族だから責任を取らなきゃいけないというのは本来的ではなくて、取締役として会社の経営に責任ある立場で関わってきたから、その立場で対応しないといけない。その認識がずれているのは問題が大きい。その認識のままでは、どうしてもガバナンスの部分が正しく処理されない可能性が残るかなと思いました。

もう1つ気になったのが、補償の原資がどこなのか。内部留保から出されるのか、または例えばファンクラブ会員事業から出されていくのか。お金の出所が非常に大事です。このファンクラブ事業はうわさでは年間500億円の売り上げがあるといわれ、継続して課金されているものなので、事業価値としては数千億円あると考えられます。この事業を新会社に移すのか、移すとすると新会社が数千億の資金をどう用意するのか。ジュリー氏にそのお金が入るのか。それともファンクラブ事業を一度閉じて、新会社でファンクラブができるかなどが明確にならないと判断がしづらいなと思います」

【ジャーナリスト 松谷創一郎さん】
「安部さんの指摘はすごく鋭いです。ファンクラブのことなんですが、マネジメント事業を譲渡するのかどうかも今回の会見でははっきりしていないんです。話の流れとしては、1回全タレントの契約を解消して、“FA（フリーエージェント）”にして、行きたい人は新会社に行ってくださいという体制のようです。ファンクラブ事業も1回解体して、新たなところで始めるみたいなことになるかもしれません。ただ結局どれが一番いいのか、たぶんどれが一番税金がかからないかで判断してくると思います」

■新会社の名称はファンクラブを通じ公募　ここにも戦略が感じられる
新会社の名称は、ファンクラブを通して公募されると発表されました。東山社長は公募の理由について、「ファンと二人三脚で進むべきと判断」したと話しています。

【ジャーナリスト 松谷創一郎さん】
「時間がなかったので、9月の会見後の1カ月以内では決められなかったということもあるでしょう。もともと前回会見の時に、なぜ会社名を変えなかったかというと、一番大きいのはタレントからの突き上げです。判断基準として一番影響力が大きいのはタレントの意向だったりします。そのために前回会見の段階では判断できなかったところがあって、今回はさすがにまずいということで判断した。ただやっぱりタレントのファンを大切にしようという意向で、公募をやろうとしてるんだけれども、自分たちで『今後こうします』とアピールできないということも 意味してますよね」

「newsランナー」では社名の公募についてアンケートを取ったところ、納得できるが65%、納得できない方が35％となりました。

【納得できるという人の意見】
・ファンを大切にしてくれている感じがするから
・名前を変えないと CM などにも出られないから

【納得できないという人の意見】
・自分たちで何も決められないのかと感じる
・ジャニーズという名前を残しても…名前を愛しているファンもいる

また社名コンサルタントのYRK＆戸田成人さんによると、社名変更は「その会社の未来像を示すためにやる。ガバナンス・新体制・反省など、今後こうしていきますというメッセージを込めないとだめ。本来、ジャニーズ側が決めるべきだった」ということで、公募が良くないと言っているわけではなく、公募して決めた時に新会社の思いと合致するかどうかが重要とされています。

【安部敏樹さん】
「ジャニーズのファンの皆さんは、非常に強い“愛社精神”を持っています。たぶん既存のファンクラブを通じて公募させて、名前を決めるプロセスに関わってもらうことで、もし次の会社でファンクラブを作る時にも、自分で決めた名前だともう一度入りたくなるじゃないですか。たぶんファンクラブを1回閉じてもう1回作るときに、規模が小さくなることをなるべく防ぎたいということで、ビジネスでみると非常に上手にやってきたなと思います」

【ジャーナリスト 松谷創一郎さん】
「これも安部さんの指摘は鋭いなと思います。やっぱり何とか今のファンを引き継いでいきたい、グリップしていきたいという思いはあると思います」

社名について会見で、「グループや関連会社からも『ジャニーズ』という名前はなくなる」と話しており、完全にジャニーズの名称は消滅します。となると影響はさまざまなところにありそうです。

グループ名では、「関ジャニ∞」や「ジャニーズWEST」。ファンクラブ名は現在「ジャニーズファミリークラブ」となっているので変わるでしょう。関連会社には「ジャニーズアイランド」「ジャニーズ出版」「J Storm」「ジャニーズミュージックカンパニー」などがあります。

【ジャーナリスト 松谷創一郎さん】
「これはもうしょうがないというか、私なんか4月くらいから変える方向に行くだろうと話をしていたので、むしろここまで時間がかかったことをちょっと考えた方がいいという気がします」

■企業の“ジャニーズ離れ”の動きはどうなる
ジャニーズの再出発に向けて、前回9月7日の会見以降の“ジャニーズ離れ”の動きですが、ジャニーズのタレントを起用した65社のうち、33社が「起用の見直し」を決定しています。帝国バンク調べ（9月20日時点）で、CMなどを中止したのは14社、契約継続しないと発表しているのが19社です。

関西テレビでは、ジャニーズタレントの起用などについて、2日の会見の内容も踏まえて、再発防止策や被害者のケアについて具体的な取り組みが実行されていくのか注視していく方針ということになっています。

【関西テレビ 神崎デスク報道デスク】
「タレントの起用を停止して終わりではなくて、事務所との一定の関係を保ちながら、 被害者の補償が今後具体的に進んでいくのかどうかを見ていって、進んでないと思ったら情報開示を求めることもできますし、局側から事務所に要望を出すこともできます。一定の関係を保ちながら、今後事務所がどういう方向に行くのか注視していきたいという姿勢です」

ここで関西テレビ「newsランナー」視聴者から質問です。
Ｑ．東山社長の手腕に期待していいですか？まだまだ不安な感じがします

【ジャーナリスト 松谷創一郎さん】
「期待するしかないんですけども、井ノ原さんの方が説明もうまいですし、人徳もありそうだという印象はいなめないです。でも僕はやっぱり“プロ経営者”を連れてきた方がいいと思います」

関西テレビ「newsランナー」2023年10月2日放送

#藤島ジュリー　#東山紀之　#井ノ原快彦

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